前回の記事では、職場の同僚と全く話がかみ合わない。そんなあなたにユニバーサルトークと戦闘思考力というテーマを取り上げました。
同じテーマについて議論しているのに、すれ違いや意見の食い違いが生じたり、相手の意図がうまく伝わらなかったりすることがあります。
こうした問題の背景には、「具体」と「抽象」のレベルの違いが潜んでいることが少なくありません。
本記事では、「具体と抽象」の考え方を深掘りし、コミュニケーションギャップを埋めるためのヒントをお伝えします。
具体と抽象とは?
まず、「具体」と「抽象」の違いを理解しましょう。
具体とは
- 目の前の作業や細かい事例、現実的な出来事に焦点を当てた視点。
- 例:「今月の営業成績を改善するために、キャンペーンを実施する」といった実行可能な行動。
抽象とは
- 全体的な方向性や理念、大枠の方針を示す視点。
- 例:「顧客満足度を向上させることが重要だ」という広い視点からの考え方。
職場では、この「具体」と「抽象」のバランスが取れていないと、互いの意見がすれ違い、コミュニケーションがかみ合わなくなる原因になります。
なぜ具体と抽象のギャップが生まれるのか?
職場での会話や議論では、具体的な行動と抽象的な理念の間でギャップが生じることがあります。このギャップには以下のパターンが見られます。
具体に偏る場合
- 細かいタスクや事例ばかりが話題になり、全体の目的や方針が見えなくなる。
- チーム全体の方向性のズレが生じる可能性がある。
例:「とにかく数字を上げるためにこれをやりましょう」という具体的な指示だけで、なぜその行動が必要かが説明されない場合。
抽象に偏る場合
- 理想論や大きな方針だけが語られ、具体的な実行方法が示されない。
- 現場が何をすればいいか混乱する。
例:「イノベーションを推進しよう」という大枠の話だけが共有され、具体的な手段が不明確な場合。
知の発展モデルにおける「具体と抽象」
知識の発展には、抽象化と具体化というプロセスが必要不可欠です。このプロセスを理解すると、職場の議論がなぜ噛み合わないのか、その背景を明らかにできます。
抽象化の意義
- 具体的なデータや情報から共通点や法則を見出し、それを広い文脈で適用できる形にすること。
- 例:過去の営業データから「顧客満足度が高いと売上が伸びる」という法則を抽出する。
具体化の意義
- 抽象的な理念や方針を現実の行動に落とし込む作業。
- 例:「顧客満足度を向上させる」という目標を、具体的な施策(アンケートの実施やサポート体制の強化など)に変換する。
「抽象が見える人」と「見えない人」
抽象的な視点を持てるかどうかは、職場での議論や意思決定の質に大きな影響を与えます。
抽象が見える人
- 個々の作業の背景や目的を理解し、広い視点で考えることができる。
- 新しいアイデアや解決策を見つけやすい。
抽象が見えない人
- 目の前の具体的な作業に集中するあまり、全体像を見失いがち。
- 問題解決がその場限りの対応になりやすい。
具体と抽象を行き来するコツ
具体と抽象をバランスよく使い分けることで、コミュニケーションの質を向上させることができます。以下のアプローチを実践してみましょう。
上司として
- 指示を出す際、「なぜこの作業が必要なのか」を背景と共に伝える。
- 例:「顧客満足度を向上させるために、このキャンペーンを実施します」
部下として
- 指示を受けた際に、「この作業の目的は何ですか?」と確認し、背景を理解する。
- 例:「この施策が全体の目標にどう貢献するのか教えていただけますか?」
チームで
- 会議や議論の際、具体的な問題と全体の方針を分けて話す。
- 例:「短期的な改善策」と「長期的な目標」に分けて考える。
まとめ
具体と抽象を行き来する能力は、職場での円滑なコミュニケーションや問題解決の鍵となります。この2つの視点を意識するだけで、話の食い違いが減り、より建設的な結論に至ることができるでしょう。
職場の人間関係や議論の質を向上させたい方は、ぜひ「具体と抽象」の視点を意識したコミュニケーションを心がけてみてください。