前回までの記事では、教育基本法を話題としてきました。色々と教育基本法について調べていると、なんと「学校教育法」という法律があることを発見しました。
どうやら、教育基本法と学校教育法は、日本の教育制度を理解する上で欠かせない法律のようです。子育てをする親としては、これらの法律がどのような意味を持ち、子どもの教育にどう関わってくるのかを知っておくことは非常に重要な気がします。
本記事では、教育基本法と学校教育法の関係について、まとめてみようと思います。
教育基本法とは何か?
はじめに前回までの内容を復習です。教育基本法は、日本の教育の基本的な理念や目的、そして方向性を定めた法律です。1947年に制定され、2006年に改正されています。戦後の日本で、新しい民主主義社会にふさわしい教育の在り方を示すために制定されたもので、教育全体の根本的な指針となっています。
教育基本法のポイント
・教育の目的を「人格の完成」とし、個々の資質を最大限に伸ばすことを目指しています。
・知育、徳育、体育のバランスの取れた教育を推進しています。
・教育の機会均等を保証し、すべての子どもが公平に教育を受けられるようにしています。
学校教育法とは何か?
ではでは、学校教育法についてです。学校教育法は、教育基本法で定められた理念や目的を実際に教育現場で実施するための具体的な法律です。1947年に制定され、学校制度や教育課程、教員の資格など、学校教育に関する詳細な規定を定めています。
学校教育法のポイント
・学校の種類(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学など)とその設置基準を定めています。
・学校の運営や教育課程、教員の資格など、具体的な学校教育の仕組みを規定しています。
・子どもの発達段階に応じた教育内容や学習指導要領など、教育の実施に関する具体的な指針を提供しています。
教育基本法と学校教育法の関係
教育基本法と学校教育法は、教育の理念とその実施方法を定めるための補完的な関係にあります。
理念と具体化: 教育基本法は教育の大枠、つまり「何のために教育を行うのか」という基本的な理念や目標を示します。例えば、「人格の完成を目指す」や「知育・徳育・体育の調和」といった教育の理想を掲げています。一方で、学校教育法はその理念を具体的にどう実現するかを規定します。学校の種類や教育課程、教員の資格など、教育現場での具体的な活動の枠組みを提供しています。
実践へのガイドライン: 教育基本法が教育の方向性を示す地図だとすれば、学校教育法はその地図をもとに「どうやってそこへ到達するか」を示す「ガイドライン」です。たとえば、教育基本法で教育機会の均等が謳われていれば、学校教育法で義務教育の無償など具体的な施策が規定されるという形です。
なぜ子育て世代にとって重要なのか?
教育基本法と学校教育法を理解することは、子どもの教育に対する親のアプローチに大きく影響します。これらの法律は、子どもがどのような教育を受けるべきか、学校がどのような役割を果たすべきかを示しています。
教育への理解とサポート: 子どもが学校でどのような教育を受けているのか、その背景にある理念を理解することで、親としてどのように子どもをサポートすべきかが見えてきます。
教育制度の変化に対応: 日本の教育制度は時代とともに変化しています。教育基本法や学校教育法に関する知識があれば、その変化に柔軟に対応し、子どもに適切な教育環境を提供することができます。
具体例で見る学校教育法
教育基本法は、子どもの成長に必要な基本的な能力や態度を育むための目標を明確に定めています。特に義務教育では、以下の10項目の目標を達成することが求められています。
以下、原文より。
義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)第5条第2項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
原文のままだと、具体的にどのようなことをすればいいのかイメージしにくいかと思います。それぞれの目標をもう少しわかりやすく、具体的にしていきましょう。
目標 | 目標の概要 | 実践例 |
1. 社会的活動を通じた自主・自律の育成 | 子どもたちが自主性、自律性、協調性を持ち、社会の一員として積極的に参加し、貢献できるようにする。 | 学校や地域のイベントへの参加 家庭での話し合いやルール決め 地域活動への親子参加 |
2. 自然体験活動を通じた生命・自然の尊重 | 自然体験を通じて、生命や自然の大切さを学び、環境保全に寄与する態度を育てる。 | 自然公園やキャンプへの親子での訪問 家庭菜園や動植物の飼育 環境保全活動への参加 |
3. 我が国と郷土の理解と国際理解 | 自国と地域の歴史・文化を理解し、他国の文化も尊重し、国際社会の平和に貢献する姿勢を養う。 | 地域の伝統行事への参加 異文化交流イベントへの参加 歴史・文化に関する絵本やドキュメンタリーの視聴 |
4. 家庭生活の基礎的な理解と技能 | 衣食住に関する基礎的な知識と技能を養い、家庭生活に役立てる。 | 家庭での料理や掃除の手伝い 家計の話し合いや買い物の計画 お金の使い方や情報の使い方を教える |
5. 読書習慣と国語力の育成 | 読書を通じて国語の理解力と表現力を高める。 | 家族での読書時間を設定 図書館への定期的な訪問 読み聞かせや読書記録の作成 |
6. 数量的な理解力の養成 | 生活に必要な数量的な関係を理解し、処理する能力を育てる。 | 買い物でのお釣り計算 家庭での料理の分量調整 ゲームやパズルで数を扱う |
7. 科学的な理解力の育成 | 自然現象について観察や実験を通して科学的な理解を深める。 | 家庭での簡単な実験 自然観察や植物の成長記録 科学館や博物館の見学 |
8. 健康と体力の育成 | 健康的な生活習慣と体力を養い、心身の調和的発達を図る。 | 親子でのスポーツやアウトドア活動 栄養バランスの良い食事作り 十分な睡眠や適切な生活リズム |
9. 芸術への親しみと理解 | 音楽、美術、文芸などの芸術に親しみ、創造的な活動を通じて感性を豊かにする。 | 楽器の演奏や絵画の制作 美術館や音楽コンサートへの訪問 親子での工作や手作り活動 |
10. 職業理解と勤労の態度 | 職業についての基礎知識や技能を学び、勤労を重んじる態度を育て、将来の進路選択の力を養う。 | 親の仕事について話す 職業体験イベントへの参加 家でのお手伝いやアルバイト経験 |
まとめ:教育基本法と学校教育法の理解が子育てに与える影響
教育基本法と学校教育法は、日本の教育制度の柱として、それぞれ異なる役割を持ちながらも密接に関連しています。
教育基本法は教育の理念や目的を示し、学校教育法はその理念を具体的に実現するための枠組みを提供しています。
これらの法律を理解することは、子どもの教育に対する親のアプローチに影響を与え、子育てに役立つ知識を提供します。
具体的な実践例について、あらためて考えてみましたが、よくよく見てみると全部大事そうで、特に驚くような実践例は無いように思えます。
また、大事だとはわかっていても時間的にも費用的にも全部はできないよ、子供の好き嫌いでできないよ、とかいう考えもありそうです。
そもそも「教育」の語源に、「引き出す」や「導き出す」の意味がありました。実践例の中から、自然と子供が夢中で行っていることを提供できるようにすることが大事なんじゃないかとも思います。
日本において、教育の目的は「人格の完成」と述べられていますが、目的を意識し過ぎてしまうと、子供の良さを引き出せないのではないかとも思います。
曖昧、グラデーションの世界ですね。