子供にとって「スポーツは身体を鍛えるだけ」と思われがちですが、実は運動と脳の発達(認知機能)は深い関わりがあります。特にサッカーは、ボールコントロールや試合展開など複雑な動きと判断を同時に求められるため、脳を活性化させる効果が期待できるスポーツです。今回は、子供の認知機能を伸ばしたい方に向けて、サッカーを取り入れるメリットや具体的な練習内容をご紹介します。

サッカーが子供の認知機能を高める理由
- 複雑な動きと判断力
サッカーでは、ドリブル・パス・シュートのタイミングだけでなく、チームメイトや相手の位置を瞬時に把握し、どのように動けば有利になるかを考え続けます。この過程で、空間認知能力や集中力、選択的注意などの認知機能が総合的に鍛えられます。 - 協調性とコミュニケーション
試合中はチームメイトと連携しながらプレーするため、他者の動きに合わせた素早い判断が要求されます。相手の動きを観察し、瞬時に進路変更やボールコントロール方法を変えることができれば、協調的な思考力も育まれます。 - 楽しさと継続性
サッカーは「走る・蹴る」だけでなく、ゴールを決める喜びや仲間との連携など、子供にとって興味を引きやすい要素がたくさんあります。楽しみながら続けられることで、長期的な運動習慣になりやすいのもメリットです。
論文からわかった具体的なサッカー練習内容・頻度
ある研究では、9~10歳前後の子供を対象に、約6か月間にわたるサッカーのトレーニングプログラムを実施し、身体的な運動能力と認知機能の向上を確認しました。以下にそのプログラムの大まかな内容や頻度をまとめます。
練習頻度と時間
- 頻度:週2回
- 1回あたりの所要時間:合計75分(ウォーミングアップ10分、メイン練習60分、クールダウン5分)
- 期間:6か月継続
ウォーミングアップ(約10分)
- 軽めのドリブル
- ゆっくり歩きながらボールをドリブルし、足元でのコントロール感覚をつかむ
- パス練習(円形パス回し)
- チームメイトと円になり、軽いジョギングをしながらパスを回す
- 時には壁に向かってボールを蹴り返す練習を取り入れる
この段階ではストレッチよりも、身体を温めつつボールに慣れることを意識します。
メイン練習(約60分)
メイン練習では、基本技術の習得とゲーム形式の両方を組み合わせて行います。進め方の一例は次の通りです(1回の練習で全てを行うのではなく、適宜ローテーションして実施)。
- 個人スキル強化(約10~15分)
- ドリブルの方向転換、細かいタッチ練習
- 1対1のボールキープや奪取トレーニング
- シュートフォームを確認する基礎ドリル(インステップ・インサイドなど)
- ミニゲーム形式(約20~30分)
- 3対3、5対5などの小規模チーム分けで試合を行う
- コートを小さく設定し、攻守の切り替えやパスコースの選択を繰り返す状況を作る
- 試合形式の中で起こる多彩な状況判断が、認知機能の向上に繋がるポイント
- 協調性とチームワークのエクササイズ(約10分)
- ゴールの数を増やして多角的な視野を持たせる
- 攻撃側・守備側の人数差を変えて優位・不利な状況を作り出し、素早い判断力を育む
クールダウン(約5分)
- 軽いストレッチや呼吸を整えるエクササイズ
- 当日の練習で気づいた点や成果を子供同士・コーチと話し合う
サッカーがもたらす運動面・認知面の効果
- 運動面
- 走るスピードや瞬発力:スプリントやアジリティ(方向転換)能力が向上
- コーディネーション(協調性):複雑な動作を繰り返すことで、バランス感覚や全身の使い方が上達
- 下半身の筋力:ジャンプ力など、脚力を要する運動においても優位に働く
- 認知面
- 視覚的判断の迅速化:動くボールや他のプレイヤーの位置を素早く捉え、瞬間的に次の行動を決める
- 注意力・集中力の向上:ゴールや仲間、相手選手を意識しながらプレーすることで選択的注意が鍛えられる
- 計画力や問題解決力:試合の流れを読み、戦術を考えるなど、戦略的思考を磨く機会が多い
サッカーを始める際のポイント
- 子供の興味を尊重する
どのスポーツでもそうですが、子供が「やってみたい!」と思う気持ちが大切。無理強いは逆効果になりやすいので注意。 - 楽しさ重視の練習を
小さい頃は技術の習得よりも、遊び感覚で楽しめるメニューを多めにすると長続きしやすいです。 - 安全面の配慮
成長段階によって体格や筋力の差があるため、適切なサイズのボールやコート、トレーニング量をコーチや親が見極める。 - 目標を設定し、振り返りをする
「次の試合で◯◯ができるようにしよう」など小さな目標を立て、練習後や試合後にフィードバックするとモチベーションが維持しやすくなります。
まとめ
サッカーは子供の運動能力だけでなく、認知機能(注意力や判断力など)を効果的に伸ばすおすすめスポーツです。練習頻度は週2回、1回あたり75分程度を目安に、ウォーミングアップ・メイン練習・クールダウンの流れをしっかり作ると効果的とされています。特に、小さいチーム編成のミニゲームを取り入れることで、判断や視覚的な集中力を鍛えやすくなるでしょう。
子供が興味を持って楽しく続けられるよう、ぜひサッカーを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。スポーツを通して身体面・認知面の成長を同時に促し、のびのびとした未来をサポートしてあげてください。
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